歯科医院のための経営塾
このページには、経営の基本的事項を、歯科医院の経営にあてはめて、具体例を入れながら、分かり
やすくまとめてあります。お忙しい先生方の、少しでもお役に立つことができれば、幸いに思います。
それでは、経営塾をスタートしましょう!
経営戦略?
マーケティング ?
人事戦略 ?
財務戦略 ?
これらは、なんなんでしょうか?
大企業で、やっていることを、歯科医院でも必要でしょうか ?
答えは、勿論、YES です。
でも心配する必要はありません。
既に院長先生は、意識する、しないにかかわらず、これに近いことをしています。
例えば、
・新しい技術(たとえばインプラント)をやり始め、新しい患者さんを開拓する。
・今まで以上の接客サービスを行い、口コミで新しい患者さんを開拓する。
これらは、経営戦略です。
例えば、
・新しい看板をつける。
・電話帳(タウンページ)に電話番号を登録する。
・患者さまとのコミュニケーションを大切にするようにする。
これらは、マーケティング戦略です。
そうです。あたり前のことを、普通にやっていればいいのです。
しかし、どうせするなら「戦略的に」やった方が成功する確率は高いです。
「戦略的に」とは、一貫性をもって、すべての作戦が行なわれることです。
よって、無駄のない経営ができるのです。
経営資源(=ヒト、モノ、金、情報)の少ない、小さな歯科医院や企業のほうが、大企業よりも、むしろ
この「経営戦略」が必要なのです。
歯科医院の経営戦略
以下は、歯科医院の経営戦略を構築するためのプロセス(手順)を図にしたものです。
前述した一貫性のある経営を、歯科医院が目指すのであれば、このプロセスに従い各種の戦略を構築
していけばよいのです。
これとは、反対に全体を見ない戦略(例えば、内装や看板だけを切り替える、また、部分的な人材教育、
ITの導入など)は、戦略とはいえません。
つまり、そこには一貫性がない可能性があるからです。「木を見て、森を見ず」になってはいけません。
是非、この「経営戦略の構築プロセス」を理解し、戦略性のある経営にチャレンジしてください。
「戦略」とは、なんでしょうか?
この言葉は、もともとは軍事用語でした。
それが、アメリカのチャンドラーという経営学者が、1960年代に「組織は経営戦略に従う」と定義し、
そのころから世界に登場したと言われています。
「経営戦略」とは、
戦術(院内設備・接客・広告・看板など)より広い作戦計画のことで、各種の戦術を総合し、経営を
全体的に方向づける作戦が経営戦略です。
また、基本的には勝つ(歯科医院が生き残っていく、成長していく)ための、方向性でなければなりません。
ここでは、これを「成長戦略」とします。
(撤退戦略などの例外を除けば、衰退していく方向性はないのです。)
ここで、歯科医院の「成長戦略」はどんなものがあるかを考えて見ます。

上記は、アンゾフ(米国、経営学者)の”成長ベクトル”を歯科医院用にアレンジしたものです。
他の業種や企業と同様に、歯科医院も常に”成長”(何か新しいことにチャレンジ)を続ける努力をしなけれ
ば、患者さまの嗜好など経営環境が激しく変化する中で、いずれ衰退し、存続さえも危うくなっていきます。
成長ベクトルは、企業(歯科医院も含む)が、その”成長”の方向性を決定するためのツールがこのです。
業績が横ばいのときは勿論、定期的(3年〜5年)に検討する必要があります。
先生の医院でも、このうちどこかの方向性(ベクトル)を、はっきり決めて進んでいくことをお勧めいたします。
そうすることで、前述しましたように、少ない経営資源(ヒト、モノ、金、情報)を最大限有効に活用していくこと
ができます。
また、経営のしっかりした軸ができ、一貫した経営ができるようになります。
基本的には、@〜Bの成長戦略(=方向性)の中で、検討するのが良いでしょう。
Cは、本業以外に進出する戦略ですので、あまりお勧めはできません。
【まず、@の箱を見てください。】

@「市場浸透戦略」です。
これは、最も簡単な方法です。
これは、今の市場、例えば医院の500m以内(都心部では300m以内)などに住む住民や勤める会社員の
うち、まだ先生の歯科医院に来ていらっしゃらない方を開拓していく作戦(方向性)です。
手法としては、今ある技術や接客サービスの質を高めて、主に口コミで新規の患者さまを集患していきます。
具体的には、研修会に積極的に参加することや、縦横の情報から今、患者さまから喜ばれている痛くない
技術を取り入れる。あるいは患者さまの口腔内の情報を積極的に提供する。
また、スタッフの接客サービスをワンランクあげる。インフォームド・コンセントは当然として患者さまとの
コミュニケーション向上に力を入れる。
など、手法はさまざまですが、ここで大切なことは、自歯科医院の強みを生かすことです。
これが兵法の定石です。
もしも、明確な強みがない場合は、これから強みにすればいいのです。
ここが、めちゃくちゃ大切なところです。
歯科医院は、いまほとんどの場所で増えてしまい、まさに過当競争の状況です。
この過当競争の中で、生き残っていくためには、この強みや特徴が必要なのです。
中途半端が、一番ダメなのです。
【次にAの箱を見てください。】

A「(新)医療技術・サービス開発戦略」です。
これは、一般の企業で言えば、新製品や新サービスを開発して、新しいお客さんを増やしていこうという
作戦です。
これも@と同じように、今の市場で、まだ先生の歯科医院に来ていらっしゃらない方を開拓していく作戦
(方向性)です。
手法としては、新たな医療技術やサービスを行なうことで、新しい患者層を取り込むなど、@の「市場浸透
戦略」よりも、少し積極的な作戦です。
具体的には、今までやったことがないインプラントやレーザー治療を導入してみる。
ホワイトニングやPMTCなど審美中心の歯科医院になる。
あるいは新たに衛生士を雇い、予防・メンテナンス中心型の歯科医院になる。
専用のカウンセリングルームを作り、患者さまへの相談機能を高める。
など手法はさまざまですが、ここで大切なことは、対象市場(地域や商圏)の中での患者さまのニーズを
把握したうえで、実行することです。
これも兵法の定石です。
患者さまへのアンケートや医院周辺のマーケット調査で、概ね把握することができます。
新規の投資や人件費の増加も発生しますので、この方向性に進む場合には、慎重な検討が必要です。
【次にBの箱を見てください。】

B「(新)市場開拓戦略」です。
これは@Aと違い、今の市場ではなく、まったく新しい地域の患者さまを、集患していく作戦(方向性)です。
手法としては、分院を展開することで、新しい地域の患者さまを集患する。
また、インターネットや雑誌、広告で、遠方の患者さまを集患する。などあります。
分院展開の場合は、資金もかなりかかるため、リスクを洗い出し、それをいかにヘッジ(回避)するか、
また、しっかりした市場調査と経営計画を立て、万一の場合は速やかに撤退するくらいの覚悟で望む必要が
あります。また分院に適した人材(歯科医師、
衛生士、助手など)を採用し、先生の理念・方針を実践できるチーム作りをしなければなりません。
いずれにしましても、相当の準備や資金力、経営管理力が求められますので、専門家の助言を受けること
や、市場調査を十分に行い、成功のための戦略や、十分なリスク管理が必要になります。
インターネット等により遠方から集患をする場合は、相当の特徴(宮城県の某医院等)がなければ集患は
難しいでしょう。基本的に歯科医院は地域密着型のビジネスです。
ただし交通の便いい首都圏でしたら、1時間くらいなら商圏内になる可能性もあります。
また、これをする前に、既存の市場では、もうどんなに努力しても成長の可能性がないのかを、慎重に判断
する必要があります。やみ雲にやられても成功は困難です。
「経営戦略」をたてる際の、留意点
@現在および近い将来の歯科業界の環境や動向に、いかにしたら自分の歯科医院が適応していけるか
(特徴や強みを発揮できるか)の視点で考えましょう。
A未来志向で考えましょう。
B歯科医院内の従業員・スタッフの意思決定の指針となるものにしましょう。
歯科医院のマーケティング戦略
「マーケティング」とは、なんでしょうか?(よく言葉は聞きますが)
Market(市場) + Ing(活動) が示すように
歯科医院が、市場で、医療サービスなどを患者さまをはじめとする消費者に提供するための、
すべての活動をさします。
現代のマーケティングの第一人者として知られるコトラー(米国、経営学者)は、
「マーケティングとは、個人や集団が、製品および価値の創造と交換を通じて、そのニーズや欲求を満たす
社会的・管理的プロセスである」と定義しています。
これをもとに、歯科医院のマーケティングを定義すると、以下のようになります。
『歯科医院が、価値のある医療やその他のサービスの創造・提供し、世の中のニーズやウォンツ(欲求)を
満たす活動の過程のことである。』
そして、それを実行するための具体的な戦略(作戦)が、マーケティング戦略と呼ばれるものです。
上記で、「患者さま」ではなく、あえて「世の中」と表現したのは、対象(=ターゲット)を歯や口腔内の疾患に
かかった方だけではなく、もっと広く・大きく捉えていただきたいからです。
それは、その上の「創造」と関係があるのですが、今や将来の歯科業界の過当競争等の状況を考えると、
既存の価値観や医療サービスでだけでは到底行き詰っていくことが目に見えてわかります。
やはり、世の中にとって価値のある、新しい医療やその他のサービスを創造することにより、新しい市場を
自ら創っていくことが必要です。
その際、大切なことは上述しましたターゲットを広く大きくとることです。
(ただし、新しい方向性を考えたり、アイディアを考えたりする場合はこれでいいのですが、最終的な自院の
方向性やマーケティング戦略を決める際は、ターゲットは極力絞ることが大切です。)
マーケティング戦略構築の手順
1.ターゲットの設定
競合医院よりも的確に顧客ニーズを充足するために、自院が対象とする顧客集団を明確化することです。
市場のニーズが多様化・複雑化する中で、すべての方に対して同じ方法で診療やサービスを提供すること
で、ニーズを充足し満足を得ることは困難になってきています。
何らかの基準(年齢層、性別、嗜好など)において市場を細かくして(これを市場細分化といいます)、
全体市場のどの部分を自院のターゲット(標的)とするべきかを決めます。
2.マーケティング・ミックスの開発
設定されたターゲット市場に向けて、あらゆる戦略を統合的に調整し、最も効果的と思われる戦略の
組合せ(ミックス)を開発することです。
歯科医院の場合は、以下のようになります。
@医療・サービス戦略 ・・・診療内容やサービスをどのような内容とするか。(ブランドなども入ります。)
A価格戦略 ・・・歯科医院の場合、保険収入の価格は決まっていますので、自由診療収入や
雑収入に関わるものが対象になります。
提供する医療・サービスの価値に見合った価格であるか、また、十分な利益を
確保できるような価格であるかなどを検討し、価格の設定、変更を行なう戦略
です。
Bプロモーション戦略 ・・・自院の診療やサービスの内容を広く知らしめて、診療の受診やサービスを受ける
ことを促進させる戦略のことです。(広告宣伝や看板・広報、コミュニケーション
など)
C診療所・付帯施設 ・・・診療所の主にハード面をどうするかの戦略のことです。
ここで大切なことは、歯科医院の成長戦略(方向性)やターゲットを常に意識して、それらにフィット(適合)
させて、一貫性を持たせて、このマーケティング・ミックスが検討・構築される必要があることです。
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