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歯科医院の就業規則
就業規則とは、労働時間、休憩時間、休日、休暇、賃金、賞与、手当、退職、表彰、懲戒など職場で
働く際に必要になるさまざまなルールを定めたものです。
常時10人以上の労働者を使用する使用者は必ず作成して、労働基準監督署に届け出なければならない
ことになっています。
また、使用者はその内容を労働者に周知させるため、常時見やすい場所への掲示、備え付け、又は書面
の交付などをしなければなりません。(作っても、院長室の引き出しにしまっておいては効力はないのです。)
労働基準法89条には、
「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、・・・省略 ・・・就業規則を作成し、
行政官庁(=労働基準監督署)に届け出なければならない。 ・・・省略・・・」とあります。
ここで安易に、「当歯科医院は従業員8名だから、就業規則はいらないや」と考えてしまいそうですが、
法的には、それでもいいのですが、 実はこれには色々な落とし穴があるのです。
何点かお話させて頂きます。
1.就業規則がないと、基本的に労働基準法等の労働法がルールになり、
①定年もないことになります。
②残業をさせることができません。
(残業をさせるには労使協定(36協定)という従業員代表との協定も必要で、
そうしないと違法行為になってしまいます。)
③スタッフ(従業員)を解雇することができなくなる可能性もあります。
2.また、スタッフとの人事トラブルが起こったときに、リスクが大きい
①労働基準監督署にスタッフが残業代の不払い等で相談に行った場合
例えば、スタッフが残業代が時間どおり支払われていないと、労働基準監督署へいったとします。
(実際にこういったケースは多くなっています。)
その場合、労働基準監督署は歯科医院に調査にやってくる可能性があります。
(必ず来るわけではありませんが)
そして、院長に対して、就業規則、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿等の提出を命じます。
この時、タイムカード等で残業の事実が確認されたにもかかわらず、就業規則がない場合は、
そもそも残業をさせていたこと自体が法律違反となり、是正勧告をいう重い行政処分を受けること
になります。
また、残業代の未払い額があった場合には、2年間に遡っての計算とその支払を命じられます。
程度にもよりますが、数百万円になることもありうります。
②解雇・退職でもめた場合
先ほども書きました通り就業規則がない場合、基本的にはそもそも歯科医院側の意思でスタッフに
医院を辞めてもらうことはできません。(解雇を相当とする合理的な理由や、社会通念上解雇を正当と
する理由ががあるときを除く)
万が一辞め(解雇)させたスタッフが、裁判所へ訴えた場合その解雇は無効になる可能性があります。
しかし、遅刻や無断欠勤等が多い従業員(スタッフ)を解雇できないことは、その歯科医院にとって
大変大きなリスクとなります。
就業規則で基準を明確に定め、スタッフに理解させることで、できれば未然に防止することに越したことは
ないのです。それでも、そのような事態(遅刻の繰り返し等)が発生した場合は、注意や啓蒙をした上で、
毅然とした対応(解雇予告)をすることになります。
③賞与の支給対象者でもめた場合
よくある事例が、退職後に賞与の支払いを求めてくるスタッフとのトラブルです。
「賞与は支給日在籍者のみに支給する」など就業規則に明記していない限り、その計算対象期間
に在籍していた従業員には支払うべき」との裁判例もあります。
④スタッフが「明日辞める」と言ってきた場合
急にこのような申出をしてくることもよくあるケースです。
医院としては、次の人員の採用や業務の引継ぎの問題もあり、少なくとも1ヶ月くらい前には、
言ってもらいたいところです。
法律的(民法627条)には、14日で雇用契約の解約ができるとの規定もありますが、
就業規則で、「1ヶ月前までに申し出ること」などとと記載すること自体にはに問題はありません。
そもそも、トラブルは何故起こるのでしょうか?
人間は”感情”の生き物です。
院長にも感情、スタッフにも感情があります。
ルールがなく、感情や思いつきで、人の管理(労務管理)をすると、トラブルになる可能性が、
極めて高くなります。
日本人は、ルールを守るように子どもの頃からしつけられ、基本的には従おうとします。
しかし、社会人になったとたんに、ルールのない世界(就業規則等のない歯科医院など)に入り、
そこで院長等の思いつきなどで、医院の運営がなさている場合、
それが自分(スタッフ)への不利益になったとたんに、理性ではなく、感情が出てきて、
トラブルに発展するのではないでしょうか。
よくトラブルや問題が発生したあと、「就業規則で・・・を定めておけばよかった」、
「そうすれば、何の問題もなかったのに」という声をお聞きします。
このようなことにならないように、しっかりした就業規則を定めておくことが大切です。
また、歯科医院のビジョン・目標を達成させるためには、スタッフ等に 医院の理念を浸透させた上で、
心から協力してもらい、一致団結して歯科医院経営を行なっていかなければなりません。
そのためには、歯科医院側もスタッフの権利と義務を明確にする必要があります。
具体的には、スタッフの関心の高い年次有給休暇や特別休暇や昇給のしくみなどを明確化し、
権利を保証します。
これがあやふやだと、スタッフは不安や不満を持つ可能性があります。
逆に、スタッフの遵守するべき事項等も規定し、ルールに従ってもらうようにすることが大切です。
メリハリをつけ、きっちりと運用すれば、人事トラブル等のリスク回避だけでなく、労務費などのコストの低減
などにもつながります。
また、労働関係法令は頻繁に改正されます。就業規則の定期的な見直しを行ない、最新の法令に
適合させておかないと、思わぬリスクが発生する場合もあります。
最近では、男女雇用機会均等法や、パートタイム労働法などの改正があり、女性やパートタイムのスタッフ
が多い歯科医院においては、十分に注意が必要です。
(就業規則作成のメリット)
○医院の人に関する管理(採用から退職まで)を規則に基づいて適正に、素早く行うことができる。
○しかも、あらかじめ定められたルールにもとづいた指示や命令である為、スタッフの納得性が高い。
○万一、労使のトラブルに発展した場合でも、解決がしやすくなる。
○コンプライアンス(法令等)を重視した医院と思われ、採用がしやすくなる。
○既存のスタッフのモラルや帰属意識が高まる。
○スタッフの満足度向上に寄与し、定着率が高まる。
○作成の過程において、労働関係法への理解が深まり、リスク回避ができる。
○残業代の支払を削減する方法もある。(変形労働制、その他)
○この他にもたくさんあります。
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