ビジネスコラム

中小企業金融円滑化法(2) - 中小企業の経営改善のポイント

2013/02/11|ビジネスコラム

経営改善とは、実力をつけること

私どもは、中小企業から直接、また金融機関から依頼を受けて、中小企業の経営改善のお手伝いをさせていただいております。

 

中小企業の経営改善をお手伝いさせていただく際に必ず申し上げることは、次のようなことです。

 

「私は会社の経営の実力をつけること、すなわち赤字から脱却すること、収益性(利益)を高めることを目的に支援をします」
「それは短期的な資金繰り対策や、金融機関への資料作成、決算操作などの一時しのぎ的なものではありません」
そのうえで、「それにご賛同いただけるなら、一緒にその方法を考えていきましょう」

 

それは、一時的な資金繰りのための借入や、形だけの経営計画の作成や利益操作などは、中長期的にみると何の役にも立たず、かえって中小企業の体力を弱めてしまうことが多いことを、これまでの体験から強く認識をしているためです。

 

バブル経済崩壊後、これまでも何度もこのような緊急措置が行われ、多くの中小企業が生き延び(延命され)てきました。

金融危機の中、1998年には「中小企業金融安定化特別保証制度」(通称:特別保証)が創設され、特別枠として5000万円の融資がほぼ無審査で中小企業に貸出れました。結果は、それにより救済された中小企業がある一方で、 多くの中小企業の資金繰りがより悪化し、倒産に追い込まれることになりました。

 

その後、2008年には「景気対応緊急保証制度」(通称:緊急保証)が創設されました。こちらは「特別保証」よりは審査が厳格化されました。

 

これらの制度は、確かに一時的には中小企業の資金繰りを助けます。しかし、一方で中小企業の経営改善のスピードを遅らせる場合もあります。

 

幸い経済環境等の外部環境が好転し、業績が回復する場合は良いのですが、それでは運任せということになります。

 

その間に経営改善を実行しない中小企業企業は、借入金が増えその返済負担が増えることで、かえって資金繰りが厳しくなり、 倒産に追い込まれることさえあります。

 

やはり大切なことは、これらの制度を活用すると同時に、自らの企業の経営を抜本的に改善することです。

 

抜本的な改善とは、継続的に利益を創出する実力をつけることです。

 

継続的なキャッシュフローの最大の源泉は「利益」ですので、ここに手をつけずに、抜本的な経営改善はあり得ないということです。

 

勿論、土地や建物、有価証券などの資産の売却や、預金等の相殺などの資産のリストラによる借入金の圧縮は、短期的には効果をもたらしますが、慢性的な赤字に陥っている中小企業の場合には、それだけでは資金繰りをはじめとする経営の安定化は難しいと考えます。
これらの手法は、実力をつけることとは意味が違うのです。

 

やはり、利益を稼ぎ出す力を取り戻すことが必要なのです。つまり、継続的・永続的に借入金を返済していける力が実力です。

 

そのような企業になれば、当然金融機関からの評価や信用も高まりますので、結果として必要な時に必要な資金の借入等を行うことができ、ビジネスチャンスを生かすことができたり、経営が安定することにつながります。

 

すなわち、私どもでは、経営改善とは会社の実力を上げることと定義しています。

 

中小企業金融円滑化法においても、中小企業の経営改善を前提にして、借入金の返済猶予などの条件変更を金融機関に求めて います。

 

しかし、前述の取材結果の通り、多くの中小企業の経営は改善されておらず、返済猶予の間に中小企業が経営の立て直しを行う という法律のねらいは達成されていません。

中小企業の経営を改善する(実力をつける)ためのポイント

以下は、中小企業の経営改善のポイントです。

 

これらは多くの中小企業の経営改善をお手伝いさせていただいて、実践の中から導き出したノウハウです。

 

1から6まで優先順位が高い順に記しています。絶対(早急)に実施して欲しいのは、1~5までです。

 

  1. 経営者が現状・現実を正しく認識する。
  2. 経営者の自覚、または経営幹部の経営改善への共通認識と協力への約束
  3. 幹部間や現場との徹底的な意思疎通
  4. コスト削減(ムダな経費の徹底的な削減、時には人件費削減もあり)
  5. 効率化(社員を巻き込んだ効率や仕事の改善の追求)
  6. 営業・販売の強化(または顧客サービスの改善)

 

これらの1から6までの事項を実行すれば、必ず企業の経営改善は実現できるはずです。

 

しかし、中小企業の経営改善の実現性やそのスピードには、バラツキがあるのも事実です。
最も、障害になることが多いのは1~3です。

 

それは経営者の性格(ワンマン経営、変化への抵抗、成功体験など)や、コミュニケーション力の不足、人間関係などが複雑に絡み合って、その実現を阻害するからです。

 

1~3までがうまくいけば、後は比較的にスムーズに改善されていきます。

 

勿論、これらを計画という形にすることも大切ですが、それは実行を忘れないために書き残すことが主眼であり、金融機関に提出することに主眼はおきません。

 

必要なことは、シナリオ(計画)を描き、実行者(配役)を決め、結果を確認(監督)する。これだけです。

 

 

「中小企業金融円滑化法(3) – コンサルティング機能と出口戦略」へ続く

西山真一
(資格) 社会保険労務士、中小企業診断士、ターンアランド・マネージャー他
いかにして人や企業の本当の力(潜在能力)を引出し、今以上のパフォーマンスを発揮していただくことにより、経営理念の実現や業績向上・組織活性化・人と企業の成長などのお手伝いができるかが、コンサルタントの仕事だと考えます。
一覧

関連ページ

ページトップ