中小企業の業績悪化のパターンと企業再生⑨ - 人件費の削減
2013/02/11|ビジネスコラム
人件費の削減
さて、中小企業が慢性的な赤字経営から脱却するためには、コスト構造の変革が必要なことは、既に述べてきました。
そのコスト構造の変革において避けて通ることができないのが、人件費の削減です。
できれば人件費の削減は行なわずに黒字化することができれば良いのですが、既に述べてきましたように経費とりわけ固定的に支出される経費の中で、最も多くの割合を占めるものが人件費です。
したがって、何らかの形でここには手をつけざるを得ないことが、実際の企業再建や再生の現場では多いのが実態です。
人件費削減の方法は様々あり、以下のようなものが代表的な方法です。
① 役員報酬の削減、および役員の社会保険料の削減
※決算期の途中での変更は、一定の条件と手続が必要です。
② 従業員の賃金の削減
(ア)残業代等時間外手当の削減・・・強制的な早帰りの実施、残業規制など
(イ)賞与の支給額の減額、または廃止
(ウ)定期昇給・ベースアップの減額または廃止
(エ)賃金の一律減額、ベースダウン(基本給、手当等)
(オ)退職金の減額
(カ)パート・アルバイトの員数・労働時間の削減
上記を実施する場合は、賃金規定や就業規則の定めや雇用契約書の内容により、比較的簡単に実施が可能な場合と、そうではない場合とがありますので注意が必要です。
また、従業員には誠心誠意しっかりと説明を行ない、理解を求めることが大切です。
従業員のモチベーションを下げないような対応をすることが求められます。
(※私共も、その様な説明会等のお手伝いをさせていただくことがあります。)
さらに、会社の規定やこれまでの慣行にもよりますが、(ウ)~(オ)は、一般的には就業規則や賃金規定等の変更を伴いますが、労働条件の不利益的な変更にあたる可能性があります。
そのため万一裁判で争われた場合は、その変更等の措置は無効になるケースもありうります。
そうならないためにも、従業員との信頼関係を維持しながら、誠意を持って交渉にあたり、協議を尽くすことが重要です。
③ 新規採用の抑制、または中止
④ 役員の退任・辞任・解任
⑤ パート・アルバイト・契約社員の雇止め(契約期間満了による雇用契約の終了)
⑥ 正社員の希望退職、および退職勧奨
⑦ 正社員の整理解雇
ここでは、①~⑦まであげましたが、実施の順序としては、上記の上①から下⑦の順序を基本に行なうことが一般的です。(ケースにより前後する場合もあります。)
既に述べましたように、企業経営の本質的な目的は企業の存続のために利益をあげることです。
そして、企業が存続して社員の雇用を守ることが大切です。
したがって、④~⑦はなるべく実施しないような形で、かつコストを削減して企業を存続させて行くことが重要です。
そして、コスト構造の変革を実行した結果、企業が利益を生む状態になったら、役員の報酬や従業員の賃金を上げるなどを実施していくべきものと考えます。
その際、頑張った人や、成果を上げた人、利益に貢献した人などに多く配分するような仕組みに作り変えていくことがコスト構造の変革です。
変化が早い今の経済・経営環境の中、同じ土俵で、同じやり方やだけでは、企業は存続していくことは難しいのです。
企業は常に変革が求められているのです。